小山量PCにノコッタノコッタ著(遺)作(著作ではなくちょいさく)

一応確実に量の作品と思われるものをPCからコピーして掲載します。

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 でも万が一お友達の作品をダウンロードなりコピーしたものがあったら「それはワタシのだ!」とそうるMまでご連絡ください

   その場合は速攻取り下げてお詫び申し上げます

   連絡先は soulm@dream.ocn.ne.jp そうるMまで

★2013.10.31 Ryoの残したファイルにこんな芝居を発見しました

森田さんの「水層の記憶」で時間軸をとりいれた名作を見た後ですから、このファイルを見つけて、感慨深く思い、載せました。

この手法は芝居つくり手にとってはやはり魅力的なのかもしれません。量がトライした記録を見つけたことは本当に嬉しかった。

(仮)「天使」時間軸の創作   2007.5.27

(仮)天使の間には監督を定めず

 

登場人物

 

男1(男子生徒カズキ)

男2(男子生徒ノブ)

天使メロ(教師)

新入り天使モコモ(女生徒)

遠藤舞台監督

 

男1と男2が向かい合って立っている。男1は怒りをあらわにし、銃を手に持ち、男2に向けている。

男1は引き金に指をかける。

 

男1 死ね!

 

男1は引き金を引く。乾いた銃声が響く。男2は撃たれてから少しの間直立し、その後膝を付き、そして地面にバタンと伏す。

天使メロがスタスタと歩いて入ってくる。頭上には天使の輪が浮かび、手にはリモコンを持っている。

 

男1(動揺しながら)や、やっちまった(銃を持った手をダランと垂らす)俺―――

メロ (男1の言葉の途中で、男1・男2にリモコンを向けながら)ストップ!

 

 男1・男2は微動だにせず動かなくなる

 

メロ (誰に向かって話すわけでもなく男1・男2の周りをグルグル歩きまわりながら)人の命とは、はかないものです。そう、今のこの状況がそうだ(男1・男2の前で立ち止まる)。…(客席を向いて)人生はもっと楽しくなくちゃいけない。(再び歩き始め、男1・男2にかぶらない場所まできたら)そこで…

 

メロは勢いよくリモコンを男1と男2に向ける。すると、男1は動揺した表情から怒りをあらわにした表情に戻り(口の形は「し」を発音する形)、銃を男2に向け、引き金に指をかける。男2は上半身をおこし、膝立ちになってからスッと立ち上がり、男1と向かい合うように立つ。男1・男2はそのまま静止。

 

メロ おい、新入り!…いるか?

 

 新入り天使モコモが小走りで出てくる。

 

モコモ はい、メロ先輩。こちらに控えておりますよ~

メロ (溜め息)…。もう少し一人前の天使となった自覚を持ったらどうだ?

モコモ (ムッとしながら)持ってますよ、それぐらい。

メロ じゃあ、お前の今さっきの言葉づかいは何だ?

モコモ 大事なのはコ・コ・ロです。言葉づかいなんて問題じゃありません。それにさっきから私のこと「新入り」だとか「お前」だとか言ってますけど、私にはちゃんと「モコモ」っていう、かわいい名前があるんですから。

 

 メロは少し言葉に詰まる。セリフを忘れたのだ。

 

メロ …言葉づかいは問題じゃない、って今さっき言わなかったか。

モコモ (繕うように)メロ先輩のには心がこもってないんです。

 

 遠藤舞台監督が丸めた台本を片手に客席の方から昇ってくる。メロ・モコモの顔には緊張が走る。

 

遠藤 ダメダメダメ!(メロの方を向いて)違うでしょ。(自分の名前を強調して)この私、つまり遠藤監督の名に泥を塗るつもり?

 

メロ・モコモ す、すみません…。

 

 男1・男2は動き出そうとする。

 

遠藤 (男1・男2に対し)あなたたちは動いちゃダメ。ちゃんと役に入りなさい!

 

男1・男2再びもとの姿勢で静止。

 

遠藤 (メロ・モコモに対して)セリフ忘れたからって、適当なこと言われちゃ困るのよ。(台本をパラパラ開きながら)メロは「言葉づかいは問題じゃない」なんてセリフどこにも……(どこのページか分からず少し焦る)

 

モコモ …今、16ページです。

 

遠藤 そうそう、そうね。16ページ(安堵の表情)。(しかしすぐに厳しい表情)…ほら見て、どこにもそんなセリフないでしょ。次は「お前とそんなこと…」でしょ。

メロ はい…。

遠藤 もしそんな架空のセリフばっかりで繋げていったら、(男1・男2を指さし)この男の子たちが動き出す機会を無くしちゃうでしょ。もしそうでもなったら、………プッ(噴き出して笑うのを口で押える)。(顔をほころばせて)それ案外面白いかもね…。「あの二人ずっと最初から最後まで止まってたけど、あれ何?」みたいな。

 

メロ・モコモともに緊張した表情を崩す

 

メロ ホントですね。じゃあ、遠藤監督、今度台本に加えてみますか?

遠藤 (厳しい表情)お黙り!今は稽古に集中しなさい!…ふん、まったく。

 

 遠藤監督は客席側に向かって舞台から降りる。

 

メロ (モコモに対して耳打ちするように)俺に監督の思考回路を教えてくれ。

モコモ わかりませんよ~そんなこと。私も知りたいくらいですよ~。

遠藤 ん?何か言った?

メロ・モコモ いえ、何も。

遠藤 そう…。まぁいいわ。…じゃあ、モコモが入ってくるところから始めてみて。

 

 モコモは袖へはける。

 

遠藤 はい!じゃ、スタート!

 

 モコモが小走りで出てくる。

 

モコモ はい、メロ先輩。こちらに控えておりますよ~

メロ (溜め息)…。もう少し一人前の天使となった自覚を持ったらどうだ?

モコモ (ムッとしながら)持ってますよ、それぐらい。

メロ じゃあ、お前の今さっきの言葉づかいは何だ?

モコモ 大事なのはコ・コ・ロです。言葉づかいなんて問題じゃありません。それにさっきから私のこと「新入り」だとか「お前」だとか言ってますけど、私にはちゃんと「モコモ」っていう、かわいい名前があるんですから。

メロ お前とそんなことを話していても埒が明かない。第一、お前を呼んだのはそんな議論をするためじゃない。

モコモ 「お前」じゃなくて「モコモ」です!

メロ (ためらいつつも)…モ…コモ…君?

モコモ (嬉しそうに)はい、なんですメロ先輩?

 

 メロはモコモに耳打ちをする。

 

モコモ はい、大丈夫ですよ~。今すぐ用意しますね。

 

 モコモは小走りで退出。

 

メロ (男2の肩に手を置き)お前も死にたくはないだろ。…大丈夫、俺が何とかしてやるさ。

 

 男2は微動だにしない。

 モコモが小走りで出てくる。手には、日本語発音マニュアルという本と、ミニチュアの

屋根を持っている。

 

モコモ 持ってきましたけど…、メロ先輩。これ何に使うんです?屋根の模型と日本語発音マニュアルなんて…。

メロ とりあえず見てればわかる、新入り―――。

モコモ (怒った顔で)「モ・コ・モ」です。何度言えばわかるんです!(屋根とマニュアルを地面へ投げつける)

メロ わ、わかった、わかった。そうカッカするなよ(ためらって)モ…コ…モ君。

 

モコモ …もしかしてメロ先輩、女の子とか苦手ですか?

 

メロ (すかさず大声で)そんなわけあるか!(しかし、だんだん声が小さくなっていく)俺はそもそも女性なんかには………

モコモ アハッ、やっぱりそうだ!

メロ うるさい、うるさーい!今は職務中だぞ。遊びじゃないんだ…。とりあえずその話は置いといて―――

モコモ 置いとけません。だってメロ先輩の唯一の弱点を見つけたんだもの。

メロ   置いとけ。

モコモ 置いとけません。

メロ   置いとけ。

モコモ 置いとけません。

メロ   置いとくな。

モコモ (つられて)いえ、置いときます―――

メロ よし、じゃあ置いておこう。

モコモ ?(少し飲み込めない)……(気付く)あっ、メロ先輩、ずるい!

メロ ずるくなんかない。引っかかるお前が悪い。

モコモ あっ、また「お前」って言った!

男2 あの?

 

 モコモは止まっているはずの男2が動き出したのを見て驚く。

 

モコモ (声を震わせ)えっ、メロ先輩?(男2を指さして)動いちゃってもすよ…。そのリモコン使えば、動かないんじゃないですか?

メロ  そうか、モ…コモ君は取扱の説明を聞いてないのか?

モコモ メロ先輩、初めて自分から「モコモ」って言ってくれましたね。嬉し~い  

        な。

メロ そんなことは聞いてない。これ(リモコン)の講義を受けてないのか?

モコモ …う…けましたけど…、寝てました。…だってミカエル部長の話つまんないんですもん。

メロ まあいい。復習も兼ねて簡単な勉強会を開こう。

 

 一度暗転。その間に教卓と机が並べられている。

学校のチャイムが鳴る。「キーンコーンカーンコーン」

 3人の生徒が入ってくる。

女生徒モコモ(モコモ)・男子生徒カズキ(男1)・男子生徒ノブ(男2)

 

男1 あ~食った、食った。やっぱ昼飯はヨジダ屋の勝丼に限るな~。

男2 うまいし、安い。にしてもモコちゃん、今日はたくさん食べてたね。ビックリしちゃったよ。

モコモ 実はダイエットしようと思ってここ一ヵ月何も食べてなかったから―――

男2 というかよくそれで死ななかったな。

モコモ てへっ。

男1 「てへっ」じゃない。

 

 教師メロ(メロ)が入ってくる。手には教科書を持っている。

 

メロ 授業始めるぞ~。早く自分の席に戻れー。

 

   生徒全員席に着く。

 

メロ   じゃあ、号令を。

モコモ 起立!(生徒全員起立する)ゴマすり!(全員がゴマすりをする)着席!(全員座る)

メロ (教科書をパラパラめくりながら)…前、どこまでいったかな。

モコモ この前は77ページまで終わりましたよ。それで今日は天使のリモコンの使い方を教えるって―――

男1 やべっ!俺リモコン、家に忘れてきちゃった。

男2 カズキはいっつもそうだな。大事だって注意されたら絶対忘れてくる。

男1 そういうノブはどうなんだよ。

 

 男2はリモコンを誇らしげに男1に見せる。

 

メロ ちょっと静かに。先生、職員室にリモコン忘れてきちゃったから取ってくるけど、他に誰かリモコン忘れた人いるか?

 

 男1だけ手を挙げる。

 

メロ カズキ君だけか…。だったらたぶん余分にあると思うから。

 

 メロはリモコンを取りに行くため退出。教室はざわつく。

 

男2 メロ先生ってまじめな割には、どこか抜けてるよな。

男1 そうそう、威厳はない。

モコモ それでも、私はメロ先生のこと尊敬してるよ~。

男1 でもさ、メロ先生の授業はかったるいよ。すっげー眠い。

男2 それはメロ先生だけじゃなくて教師全員に言えること。

 

 メロはリモコンを2個持って入ってくる。

 

メロ はい、はい。静かに、静かに。(男1に一つリモコンを渡しながら)じゃあ、これは授業終りに返すこと。

男1 は、はい。

 

 メロは教壇に戻る。

 

メロ じゃあ、授業を始めます。…まず、教科書78ページの1行目、線引っ張っておいて。「天使リモコンを使う意義は、人々の生活をより喜びで満ちたものにすることである。そして、その理念を果たすために大いに役立つ機能は『巻き戻し機能』である」っていうところ。……引けたか?(生徒うなずく)じゃあ、その巻き戻し機能をためしにやってみようと思うけど、……そうだな、さっき先生がリモコンを取りに行っていた時、皆、騒いでたろ。そこまで巻き戻してみよう。

男1 せ、先生、それはやめたほうがいいかと…

男2 そうです、そうです、しない方がいいかも…

メロ どうしてだ。…じゃあ、カズキ君とノブ君そしてモコモ君、まずはお前達からだ。…(リモコンを男1・男2・モコモの方に向けながら)皆もちゃんと見とくように。じゃあ、始めるぞ。

 

  メロはリモコンの巻き戻しボタンを押す。男1・男2・モコモは時間を遡るようにメロが退出した直後まで巻き戻されていく。

 

メロ ストップ!

 

 男1・男2・モコモは微動だにせず動かなくなる。

 

メロ ほら、皆、見てみろ。ピタリと動かなくなっただろう。…でも、ストップをかけられたとしても、動くことのできる場合があるんだが、…誰かわかる人、いるか?

 

 少しの間。メロはクラスを見回すが、誰も手を挙げない。誰もわかる人はいない、もしくは、全員がshyかのどちらかである。男1・男2・モコモは動かない。

 

メロ そうか、わからないか。…じゃあ、1ページめくっての、79ページの…4行目。「しかし、我々天使は人間の自由を極度に侵害してはならない。故に、生理的欲求あるいは、その人にとっての人生全体に関わる行動欲求の2つに関しては、天使リモコンの影響を受けない」というところ。…と言っても難しいからちょっと実践してみよう。

 

 メロは男1・男2・モコモの方に向かって歩き出す。

 

メロ 例えば、今、カズキ君をくすぐってみよう(男1をくすぐる)。するとだ…

 

 男1はくすぐられた所を無表情でかきむしる。その後、無表情を保ち、先ほどのポーズへ戻る。

 

メロ …と、このように、今のが生理的欲求つまり、「かゆい」という生理現象が(リモコンを指さして)天使リモコンに優先される場合だ。ただし、この行為は無意識に行われるから本人は気付かない。…まぁ、そういう細かい説明は後で言うことにして、とりあえずリモコンの「巻き戻し機能」を使ってみよう。じゃあ、さっきみんなが騒いでいたところまで戻してみよう…

 

 リモコンを男1・男2・モコモに向け、ボタンを押すと、メロが退出した直後の状態まで巻き戻る。

 

メロ ストップ!…

 

 男1・男2・モコモの巻き戻しが止まる。

 

メロ じゃあ、始めてみるぞ…

 

 男1・男2・モコモは動き始める。再生されている会話を聞いて、メロは顔に怒りの模様を浮かばせてくる。

 

男2 メロ先生ってまじめな割には、どこか抜けてるよな。

男1 そうそう、威厳はない。

モコモ それでも、私はメロ先生のこと尊敬してるよ~。

男1 でもさ、メロ先生の授業はかったるいよ。すっげー眠い。

男2 それはメロ先生だけじゃなくて教師全員に言えること。

 

 男1・男2・モコモは、はっと我に返る。モコモは、「よかった~、下手なこと言わないで」という表情で、安堵の溜め息。男1・男2は共に、顔を引きつらせて、苦笑い。

 モコモは、安堵の溜め息の後、男1・男2を見て、くすくす笑う。

 

男1 あっ、だ、だからしないほうがいいって…

男2 ええ…あっ、…あの…そうです…

 

 メロは怒りを込めながら冷淡な表情で男1・男2を睨み、リモコンを向ける。すると、男1・男2は巻き戻され、一時止まる。その後、メロはボタンを押し、男1・男2は動き始める。

 

男1 でもさ、メロ先生の授業はかったるいよ。すっげー眠い。

男2 それはメロ先生だけじゃなくて教師全員に言えること。

 

言い終わった後、男1・男2はさらに顔を引きつらせる。モコモは横でくすくす笑う。

 メロは怒りを含めた冷淡な表情を保ったまま、リモコンを向け、男1・男2を巻き戻し、同じところから再生。

 

男1 でもさ、メロ先生の授業はかったるいよ。すっげー眠い。

男2 それはメロ先生だけじゃなくて教師全員に言えること。

 

言い終わった後の男1・男2の形相は言い表しがたい。モコモはさらにくすくす笑う。

 メロは再び男1・男2にリモコンを向け、巻き戻し。再生を押すが、今回はスロー再生(一語一語を強調して、低い声で話す)で、会話の一部を巻き戻しては再生。

 

男1 メロ先生の…かったるいよ…

男2 …全員に言えること…

 

 再び巻き戻し。スロー再生。メロの表情はやはり怖い。

 

男1 メロ先生の…かったるいよ…

男2 …全員に言えること…

 

 ここで、メロはリモコン操作を止め、教卓の上に置く。モコモはまだくすくす笑っている。

 

メロ (低い声で)カズキ君、ノブ君?

カズキ・ノブ (声を震わせて)は、はい。

メロ とりあえず君たちは、(教室の後ろを指さして)この授業中後ろで立っておきなさい。

カズキ・ノブ (震えながら)は、はい。

メロ それと、…後で職員室に来ること。

カズキ・ノブ (震えながら)は、はい。

 

 男1・男2はそそくさと立ち位置まで移動。

 

メロ (低い声で)それと、モコモ君。

 

 モコモはくすくす笑うのをはたと止め、「なんで私も」という緊張の表情で顔を上げる。

 

メロ (明るい普段の声に戻って、笑みを浮かべ)モコモ君は…よかった。

モコモ (緊張はほどけて)てへ。そうですよね、私メロ先生を尊敬していま~す。

メロ じゃあ今度、餃子をおごってやろう。

モコモ 餃子、私、苦手なんです。

メロ じゃあ、…水餃子をおごってやるよ。

モコモ 餃子から離れてくださ~い!

メロ あっ、そうか。

モコモ そうですよ―――

 

 メロとモコモは話が盛り上がっている。その時、男ども(男1・男2)はと言うと…

 

男2 ―――もとはと言えば、カズキ、お前がリモコン忘れたから悪いんだ!

男1 俺のせいじゃねぇって。俺が忘れたことと、お前が口走ったことは関係ねぇだろ!

メロ (厳しい表情と声色で、男1・男2を睨み)おい、うるさいぞ、お前ら。

男1・男2 (震えて)は、はい。すみません、先生…

 

 メロはモコモに向き直り、明るい表情で再び話し始める。

 

男1 あ~すっげぇ気まずい。早く授業終わんねぇかな(溜め息)…

男2 はぁ、ホントだよ。…………と言うか、そのリモコンって巻き戻しができるんだよな。

男1 そうだけど…それがどうした?

男2 つまりは、巻き戻しができるってことは、早送りもできるってことだよ。

男1 ってことは、このクラス全体を高速早送りすれば、一瞬で終わるってことか!

男2 そうそう、その通り!

 

(原稿はここまで)

  

 ★(以下はメモ書きと思われます この2行はsoulm記入)

 

男1(男子生徒カズキ)

男2(男子生徒ノブ)

天使メロ(教師)

新入り天使モコモ(女生徒)

遠藤舞台監督

 

講義が終わった後、なぜかモコモ君と言うのが普通になってしまっている

 

モコモが最終的に俯瞰的である。

 

暗転の時 監督が前を「しばらくお待ちください」のカンぺを持って左右に走り回る

 

男1もしくは2が早送りの決議をしてるときはメロは教科書を読んでいる風にクチパクで

 

コンセプト 空間同士の句切れがわからない 抽象画のようなもの 現実と架空が互いに影響しあう不思議さ

 

現時点よりの早送り(未来)は時空的ずれを起こす 許可が下りたときだけ使っていい

この弊害が3つの舞台を同時に進行させた example 1つの舞台は1月5日公演 1つは3月24日 1つは5月10日

 

ここでのナレーション(遠藤監督)(古畑任三郎みたいに) 舞台に上がり (虎舞竜ロード)なんでもないようなことが幸せだったと思う (モコモが「そうじゃありません」) そうこのなんでもないような早送りが悲劇の元 監督は巻き戻しをしてメロの重要なセリフ(飛ばしたところ)を再生 「早送りは絶対だめ!時空軸が壊れる」

 

だいぶ間が開くので巻き戻しで確認を 銃で撃たれるシーン

 

メロは悪口を言ったのを巻き戻しで発覚させる 音量を上げて

 

授業が長引きそうだから時計に向かって早送りを押す 

 

株式会社太平天国

 

遠藤がここで暗転にしてと言う 照明が暗転にする 今じゃない 本番よ

 

天使のコスプレ好きの監督 メロ

天使の舞台を作ろうとしている監督 遠藤

監督の仕事をドキュメンタリーに撮ろうとしている監督

 

本物の天使が現れ3人の監督の指に糸を付ける 縁がある

 

メロも舞台監督 端っこに座りかけたと思ったら実は舞台監督だから

 

男1・2は兄弟の取材者 舞台上から演者の演技を見た方がいいからいつも舞台のギミックとして出て、取材する=バイト

 

死ね 屋根

 

今は公開稽古

巻き戻しと早送りが混合される 時空のズレ

舞台終り 一変する雰囲気

ファンの子供が現れる

 

置いとけの下りで大きめのボールに「メロの弱点」と書いたのを置いたり持ち上げたりする

静岡大の戦い    2007.5.6. 0:08

静岡大の戦い 《信玄と家康》

 

(注)伝令はセリフの後必ず下がる。下がらない場合はセリフの最後に*が付く

 

ナレーション:皆さんは三方ヶ原の戦いを知っているであろうか。史実上では信玄の策略の前に完膚無きまでに家康は敗北したが、信玄は持病のために武田軍は撤退し、家康はからくも死を免れた、とされている。しかし、事実は違う。違うというよりも、正しくはない、としたほうがニュアンスとして適合すると思われる。信玄も家康も現在生きている。両者(よわい)はともに400を超えているが、ともに若々しい。戦地は浜松から場所を移し、現静岡大学。舞台は信玄側の本陣である。武田本陣は人文学部大講義室。

 

(家臣団は皆坐している。信玄はゆっくりと重みを持って入ってくる。家臣団の顔にも緊張が現れる)

信玄「まあ、そう硬くするな。ゆっくり坐せ(信玄も腰かける)。(少し間があって)状況を説明せい」

伝令「恐れながら申し上げまする。家康方の本陣はサッカー場南に確認されまするが、家康の姿は確認できず。また、静岡前バス停でも不穏な動きが*」

信玄「ふん、家康め。わしと張り合う気でおるらしい。おそらくバス停前は食糧の補給拠点であろう。まずはそこを落とさねばの。では伝令よ、敵方の兵の数は」

伝令「はっ。衛星で確認できるのは目算で本陣3000、バス停前100

信玄「(少し考えて)しかし、近くには保健管理センターがある。家康も馬鹿ではない。わしが補給拠点を落とそうとすることを考え、センターに兵を伏せておろう。」

大柴「それで臆する親父(信玄)ではなかろう」

信玄「もちろんよ。では少し驚かせてやるかね。その任そちに任せても?」

大柴「有難き幸せ。必ずや功を奏し帰ろうぞ」

信玄「その計を成すには誘導のための別動隊が必要になろう。九十九(つくも)、その任、お主に任せよう」

九十九「承知」

信玄「敵に我らの動静を知られるわけにはいかぬ。NASAの辻岡に連絡し移動する時間、衛星をずらしておくように伝えろ。また、隠密に行動するためにも馬ではなく、自転車を多用せい」

九十九「(信玄の方向を見て)一般人への処置は?」

大柴「それは親父に聞くまでもなかろう。“写メを撮られたら斬り捨てい”とのことよ」

信玄「大柴隊は片山バス停に到着したらば、ワシと九十九隊副長永沢の携帯に電話をかけよ。必ず電話に出る際は2回目で取るようにせい。1回で切れる場合は計略実行の合図と見なせ」

九十九「承知。では退出申し上げまする」

大柴「では私も」

(大柴、九十九は格式ばった退出をする)

 

倉田「(大柴、九十九を見ていた視線から、信玄に向き直って)残る問題は大学会館ですな」

信玄「勝敗の決まり手はおそらく大学会館の奪取の成否にあると言える。大柴らの計略の成功が拍車をかけることとなろう」

倉田「しかし松尾隊のみで大学会館を持ちこたえれようかと懸念を覚えまする。もし大柴の計略成功前に大学会館が落ちでもすれば、敵方は図書館を押さえるも必定。そうでもなれば地理的条件はこちらが上回っていようとも鼓舞された敵方を抑えるは必死。―――」

信玄「心配症よの、おぬしは。」

倉田「心配症などではありませぬ。事実を述べているまでです。城攻めについて知り尽くした秀吉が建てた堅城大阪城を家康は打破しておりまする。私は親父の身を案じているのです」

伝令「(急ぎつつも冷静な表情で)伝令!敵方、兵300を以て馬房へ進軍中。指揮官は井伊直政と確認」

信玄「ほっほっ、功を焦ったの家康。テニスコートに隙が出おったわ。多摩よ、隠密に学生寮は制しておいたよの?」

多摩「抜かりなく。甲賀者佐助らにより。(策略めいた微笑を浮かべ)すでに宇田隊が伏せておりまする」

信玄「さらに家康方の宇喜多はこちらへ通じておる。これでも何か懸念される思いがおありか?」

倉田「いえ」

信玄「お主のは杞憂じゃよ。―――」

(信玄の携帯が鳴る。コールは1回で切れる)

信玄「大柴らの計略の合図よ」

多摩「大柴殿ならば家康側拠点を制圧するまで3分とかかるまい。兵の脚を早めるためにも宇田隊への連絡、宇喜多隊の寝返りを促しておいたほうがよかろう」

倉田「しかし皮算用では」

多摩「倉田よ、いい加減にせい!信玄公より先程受け給わったであろう」

信玄「まあよい。その慎重さが時には役に立つものよ」

多摩「今は役に立たぬ!(倉田を鋭く睨みつける)」

倉田「(勢いよく立ちあがり)親父に向かいなんという口の訊きよう。慎め!」

多摩「(勢いよく立ちあがり)話をすり替えるでない、倉田よ―――」

信玄「(多摩の言葉が終らないうちに、低く暗めの語調で)沈まれ、(わっぱ)のような喧嘩をするでない。動かざること山の如し。些細なことで噴火するものではない」

(多摩、倉田はともに信玄の顔を見つめ、互いに悟ったような顔つきになり、ゆっくりと座る)

 

信玄「(倉田のほうを向いて)お前には悪いが、多摩の意見を採用させてもらう。同胞の器量を信ずるも必要であるぞ、倉田よ」

倉田「自身未熟でありました。では今すぐにも手筈を(携帯を手にとって急ぎ足で退出)」

多摩「逆探知されぬようスクランブルをかけるのを忘れるでないぞ」

倉田「(少し怒り気味に)言われんでも、わかっとるわ」

 

多摩「これでもう勝機は見えたものですな」

信玄「(何か含みを持った微笑をしながら)そうよの」

多摩「(微笑の意味を解しかねる様子で)??」

(倉田が戻ってくる)

倉田「(腰かけようとしながら)もうすでに宇田、宇喜多両隊は準備を整えておりまする。あとは指示を―――」

伝令「(倉田の言葉の途中で、焦燥感を漂わせながら)伝令!大柴・九十九両隊、我等武田軍に反旗を翻し家康軍と連合。兵900を以て共通教育等を破り、武田本陣に進軍中とのこと」

倉田「(狼狽しながら)何!なぜ大柴殿のような方が。親父に仕えて40年ともなろう御方であるのに」

多摩「そんな悠長な疑問を言っておる時か!(伝令のほうを向いて)伝令よ、今すぐ教育学部棟に伏せてある鉄砲隊に通達し、時間を稼げ。その間に援軍の要請をする」

信玄「ほっほっ、その必要はないよ」

多摩「信玄公、気が狂いなされたか!?」

信玄「気は狂ってはおらぬ、正気じゃよ。のぅ佐助」

佐助「(素早く現れ、信玄の後ろに坐し)いかにも」

倉田「いったいどういうことですか、状況が見えませぬ」

多摩「私も同じく解しかねまする」

信玄「佐助よ、お主が説明してくれるか」

佐助「御意。では詳細は省かせてもらうが、我々甲賀上忍は大柴・九十九が家康側に通じている情報を得た」

倉田「(震えた口調で)ちょっと待て。詳細を省かれては困る。にわかには信じられん」

佐助「家康の家臣本多(まさ)(ずみ)らと大柴の会合の現場を押さえた。証拠のテープも候が、ご覧になるか?」

倉田「(信玄のほうを向いて)親父もご覧になったのですか」

信玄「あぁ見た」

倉田「(2,3回小さく頷いて)ならばよい。話を続けてくれ」

佐助「ならば続きを。先ほどの情報を得た故に信玄公と私で策略と称し、大柴・九十九をともに家康側拠点へ向かわせた。大柴らはこれを絶好の機会と見、反旗を翻したのであろう。しかし、片山の上を走る東名高速道路には勝頼殿(信玄の息子)率いる大軍5000が潜んでおる。その軍を2隊に分け、指揮官勝頼殿が率いる隊3000は大柴軍の背後を突く。副指揮官山崎殿率いる隊2000は家康方の退却路を封じるため南へ進軍。同時に宇喜多隊がこちらへ寝返りをすれば、家康は袋の鼠というわけです」

(信玄の携帯が鳴る。コールは一回で切れる)

信玄「ほっ、噂をすれば、じゃの。勝頼は大柴らを討ち取ったようじゃ」

多摩「では早急に宇喜多の寝返りを」

信玄「そうしてくれ」

(多摩は携帯を持って出ていく)

 

倉田「にしてもよく勝頼殿の大軍が衛星で発見されませんでしたな」

佐助「それは甲賀者にとっては造作もないこと。家康に仕えていた半蔵が死して以来家康は忍びを雇わないでいる。忍びに対抗できる者は忍び以外にあらず。家康の衛星への攻撃を防ぐ手立てがなかったのは忍びがいなかった、ただそれだけのこと」

伝令「伝令!家康軍全軍、撤退を始めた模様」

多摩「(戻ってきながら)いよいよ大詰めですな(腰かける)」

信玄「ここをしくじっちゃいけないよ。竜頭蛇尾になっちゃうからね」

伝令「伝令!家康軍南へ撤退。おそらく浜松へ向かう模様」

信玄「山崎は退却拠点にまだ着いておらん。家康方がバイクであることを考えると、山崎が追い付けるかどうか微妙じゃの」

佐助「ならば私が参ろう」

倉田「上忍の佐助であろうとバイクには追いつけぬぞ」

信玄「裏手にヘリを着けておる。航空局の手続きは事後で構わん」

倉田「しかし手続きを済ませぬでおると航空自衛隊の標的となる可能性もある」

多摩「その件に関しては官介殿が適任かと」

信玄「そうじゃの。官介は確か教育学部棟に鉄砲隊を率い布陣しとったよの」

多摩「そのように。すぐに引き戻させましょう」

(多摩は携帯を持って退出)

佐助「では私も準備のほうを」

(佐助は素早く退出)

 

倉田「差し出がましいようですが、伺いたいことが存じます」

信玄「申すがよい」

倉田「なぜ、家臣である以前に武士である私どもを差し置いて、たかが甲賀者の佐助などに頼ろうと御思いに?」

信玄「見極めねばならなかったのよ」

倉田「何をです」

信玄「鈍いの、お主は。…敵か味方かを、じゃよ。そのためには第三者的な目線が必要になろうことはお主でもわかろう」

倉田「しかし、私は五つの歳より親父に仕えておりまする。これは私への裏切りでございますぞ」

信玄「だが、長年仕えてきた大柴でさえも謀反を起こした事実が今ある。そなたがワシの立場ならどう決断を下す?」

倉田「(困った表情で首をかしげる)―――」

信玄「決断を迫られたとき、どれが最善であるかなど誰にも分らん。人の生涯など博打の繰り返しよ。その一つ一つの博打に対し、主が決断した方針に忠義を尽くすこそ家臣たる所以ではないかね」

倉田「やはり私は親父の器にはとうに及びませぬ。(少し声を震わせながら)裏切りを犯していたのは私であることにも気づかぬ愚をお許しください(信玄に対して土下座をする、+まで続ける)」

信玄「もう終わったことよ。過去は反省するものではあるが、引きずるものではないよ」

倉田「はっ(+)」

 

(多摩が戻ってくる)

多摩「(腰を掛けようとしながら、信玄のほうを向いて)まもなく官介殿が到着します。一匹も逃さぬよう敵を包囲するには山崎の撤退拠点到着が鍵を握るようですな。そのためには―――」

官介「(入ってきながら)わしが必要というわけでござるな」

倉田「おぉ、官介殿」

官介「(倉田の方を向き)久しいの、倉よ。(腰を掛け、信玄へ向かい)では、わしはいかに」

信玄「差し迫っておるので手短に話すとしよう。今より数時の後、佐助がヘリにより山崎隊の敵方退却地到着を援護する」

官介「わしは航空自衛局の電波傍受と妨害を行えばよいと?」

信玄「ようわかっておるの。お主ならば、いかほどの時間で成せようか?」

官介「パソコンがあれば今すぐにでも」

倉田「では私がお持ちいたそう」

多摩「(倉田は退出し、パソコンを持って再び入ってくる。その間に)佐助にも伝えておきましょう(携帯を開き、メールを打つ)」

倉田「(パソコンを開きながら)こちらに」

(裏手でヘリが飛び立つ音がする)

官介「では始めるとしよう(キーボードを打ち始める)」

 

(キーボードを打つ音だけが響く)

 

官介「……よしっ。できましたぞ。あとは定刻ごとに新規更新すれば逆探知される恐れはありませぬ」

信玄「経由は?」

官介「現段階で最も複雑な構造を持つ島津氏のネットワークを経由しておりまする。仮に島津ネットワークからの発信を悟られようとも、こちらまでの疑いがかかることは無いでしょう」

信玄「疑われるとしても島津の方というわけか」

官介「そうなる手筈にありまする」

(多摩は携帯で佐助に電話をかける)

多摩「佐助よ、今しがた航空局ネットワークへのハッキングに成功した。気兼ねなく進むがよいぞ」

佐助「(電話の向こうで)×××」

多摩「…ほぅ、なるほど。伝えおきましょう」

(電話を切る)

倉田「で、佐助は何と?」

多摩「(倉田の方を向いて、強い語調で)今から話す。では(信玄の方を向いて)、佐助はすでに目下に家康軍を確認とのこと」

信玄「ほっほっ、仕事が早いのぉ、佐助は」

多摩「しかし、佐助の話によれば家康軍は撤退拠点へ向かっていないとのこと。何かの策略と見た方がよろしいのでは」

官介「珍しいの、多摩にしては。昔のお前ならば猪武者のように突っ込んどるだけであったのに。少し成長したかえ?」

多摩「昔から猪武者ではございませぬ。すべては勝算云々を判断した結果ゆえの行動ですので、どんなことに対しても慎重になりすぎる倉田と同じ扱いにされては困ります」

倉田「(声を荒立たせて、多摩に向かい)なぜいちいち私を引き合いに出すのか!」

多摩「ふん、引き合いに出されて不都合な事実があるからであろう」

官介「はっはっはっ、お前たちは幼いころから見てきたがおもしろいよのぉ。戦国という世に生まれなければM-1をも制する才能はあったろうに」

信玄「官介も人が悪いの。わざわざ二人がいがみ合う原因を投げかけるのであるからのぉ」

倉田「にしても、M‐1とは何ぞですか?」

官介「そうか、倉はまだ大坂へ行ったことがないのか」

倉田「はい。一度秀吉様よりご招待を預かったことがあるのですが、異国の地に一人で出向くのは不安を覚えましたので」

多摩「(厭味気に)やはり無駄に心配性よの」

倉田「猪武者のお主よりはましよ」

官介「まぁ、今はお主らの遊びに付き合ってるほど余裕は無いのでな。倉よ、お主には後M‐1について教えてやるが、(少し間をおいてから、信玄に向い)それで家康に対してはどうなさる、信玄公」

信玄「もちろん考えはあるよ」

 (信玄の携帯が鳴り、信玄がでる)

信玄「おぅ、ワシじゃ。…そうか、着いたか。じゃぁ、早う上がれ(電話を切る)」

倉田「誰です?」

信玄「もう来よう。そやつが家康の首を運ぶ使者よ」

 

(少しの間があって、勝頼が戸の向こうから話しかける)

勝頼「勝頼、ただ今戻りました」

倉田「おぉ、勝頼殿」

信玄「入るがよい」

 

(勝頼が九十九を連れて入ってくる。九十九は腕を後ろ手に縛られている。抵抗をしようとはしていない)

多摩「(九十九の方をギラリと向いて)つ、九十九!(勢いよく立ちあがり)貴様!(九十九の胸倉を掴み)よくも信玄公を裏切りおったな!」

勝頼「(多摩に対し強めの語調で)多摩殿、申し訳ないがそなたの怒りを晴らすために連れてきたわけではござらん。我等の勝機のため自重してくだされ」

 (勝頼は九十九を柱に縛り付け席に着く。多摩は気持ちを落ちつけてから、渋々席に着く)

信玄「さて、では(九十九の方を向く)―――」

九十九「私は何も言いませぬ」

信玄「おや、冷たいの。先程出て行く前までの熱意はどこに行ったのかの?」

九十九「何を言われようと何も言いませぬ」

勝頼「親父、詰まらぬ押し問答を広げても時間の無駄です。本題に入られた方がよいのでは?」

信玄「ほぅ、そうじゃの―――」

多摩「差し出がましいようですが、どうも納得ができませぬ。信玄公への忠義を捨て去ったこの無礼者は今平然と信玄公の御前に坐しておる」

倉田「私は常、多摩とは和を成しておらんが、今回ばかりは多摩に賛成いたす。私も多摩も親父に対する忠義は他に追髄を許さぬものと自負しております。その忠義を(九十九を指さして)この男は―――」

官介「(多摩、倉田を諌めるように)まだお主らは青い。もちろん首尾一貫し忠義を尽くすは、人間関係の軽薄化したこの時代においては重宝すべきことよ。しかし、その理想は現実を伴わない。情報化社会と称されるこの世界を見よ」

多摩「しかし―――」

勝頼「多摩、倉田よ、すこし考えてみてくれ(多摩・倉田は勝頼の方を向く)。お前達の言う『忠義』とは、主君の定めは厳格に守るという融通の利かぬもの。必要とされるべき忠義とは親父ただ一人への忠義でなく、武田家全体への忠義よ。そのためには心苦しいかもしれぬが、今は九十九を斬ってはならぬ」

多摩・倉田「(互いに悟ったような表情をして)未熟者で申し訳あらぬ(多摩が先に

頭を下げ、それを見て倉田も頭を下げる)」

伝令「伝令!今しがた山崎隊、敵撤退拠点に到着とのこと*」

信玄「ほっほっ、ちょうどよい頃合いよの。これで家康らは逃げ道を失った」

官介「魚鱗の陣の完成というわけですな」

信玄「して、家康の姿は確認されたかの?」

 

伝令「いえ、未だ確認できず。しかし家臣団を全て置きざりにして撤退する家康ではなかろうと思われます」

倉田「ですが佐助の報告によれば家康軍は撤退拠点へ向かわなかった。用心した方がよいのでは」

官介「そのことを今から九十九に聞こうとしているのではないか」

九十九「私は何も言いませぬ」

信玄「無口な男だったとはいえ、そんなにつまらない男だった記憶はないんだがね」

九十九「(笑みを含めて)そういう男ですよ」

信玄「強がるのは体に毒だよ。九十九一族と言えば昔は他勢力と手を結ぶことを嫌い、四面楚歌を好んだ一族。武田との闘争に敗れ傘下に入ったとしても、その血統は尽きはしていないであろう」

九十九「で、何が言いたいのです」

信玄「自らの命を落としてまで家康を救おうという家康への忠義はない。むろん武田家対してもにしても。お主が切望しておるのは他者への忠義からの解放、つまりは自由」

九十九「仮にそうだとしても―――」

信玄「『仮に』などとしなくてもよい。事実であろ?」

九十九「ええ、そうです」

 (多摩は我慢できず立ち上がろうとするが、官介が諌めるように手を多摩の前に出す。多摩は納得のいかぬような顔で座りなおす。九十九はその様子を冷静に見て、多摩が座りなおしたあと、信玄の方を向いて)

九十九「しかし、この場での口約束が信じられましょうか。自由にさせてもらったとしても(多摩の方を向いて)この猪武者に斬られるがオチ」

多摩「貴様!」

勝頼「多摩よ!ここは自重してくだされ」

信玄「では九十九よ。何を望む」

九十九「司法取引。首相の恩赦が欲しい」

信玄「ほっ、おもしろいことを言うの。だが、残念じゃが今現在日本という国は司法に関しては出遅れておってな。司法取引どころか尋問の可視化さえ認められておらん」

九十九「ならば話はここで終りよ」

信玄「話を終わりにして困るのはお互いじゃ。最大多数の最大幸福という言葉もあろうに」

九十九「お互いに利益になるならば、黙っておる価値はある」

信玄「おや、ワシが墓穴を掘ってしまったの」

九十九「(笑みを含めて)そのようで」

信玄「まぁよい。お主の意見を聞き入れてやろう。…はて、もう佐助は戻って来とるかの」

佐助「(戸の向こう側から)はっ!ここに控えておりまする(素早く信玄の後ろに坐す)」

信玄「たしか甲賀の忍びが内閣に潜伏しておったよの」

佐助「いかにも。同胞に指示し首相の恩赦状を手に入れろと?」

信玄「できるかの?」

佐助「幻術の使用をお許し頂ければ容易に(信玄は軽く頷く)。では、ただちにそう図りましょう(素早く退出する)」

 

勝頼「(九十九の方を向いて)これで充分であろう。じき恩赦状も届く。早く話したらいかがか」

九十九「恩赦状をこの目で見るまで何も言いませぬ」

官介「勝頼殿、急がずとも家康めは逃げられませぬ。ゆるりと待ちましょうぞ」

勝頼「官介殿は常に事の運びを冷静に見ておられる。私も学ばねばならぬことの多きこと」

 

佐助「(佐助が素早く入ってきて、信玄の後ろに坐し)恩赦状はこちらに(恩赦状を信玄に渡し、その後すぐに下がる)」

信玄「ほっほっほっ、佐助は仕事が早いのぉ(恩赦状を受け取る)。(少しの間、その間恩赦状に目を通し)…うむ(九十九の方を向いて)、お主への恩赦状。間違いはあらん。お主も見てみい」

九十九「(恩赦状にさっと目を通し)なるほど。確かに首相の恩赦状よ」

多摩「(納得のいかない口調で、強めに)では話してもらおうか!」

九十九「…では正直にお答えいたそう。私が最後に下された命は『時間を稼げ』との

こと」

信玄「それはあるまい。家康の性格からして同胞を犠牲に自らの命を守ろうとする武士ではない。そのことは三方ヶ原の合戦より知っておる。…九十九よ、二度目はないと思ったほうがいいよ」

九十九「それを命じたのは家康公ではあらん」

多摩「(イライラした口調で)では誰ぞ?」

九十九「私自身よ。昨年の九月家康公に謁見した際、かの男の器の大きさ、また底の

見えない隠れたる才能に男惚れをした。家康公の天下のためならばこの命捧げ

てもよいと」

多摩「嘘を(つ)くな

信玄「おそらく嘘ではないよ。この状況に及んで、九十九の眼は生き生きしておる。 先ほど忠義への裏切りに憤慨した多摩や倉田の目によう似とる」

九十九「さよう。別に命乞いがしたいわけではない。私の使命は家康公を無事撤退さ

せること。多摩、私を斬りたいのならば斬るがよい。それこそが多摩の信玄公

に対する忠義であろう」

多摩「(先ほどより少し冷静に)忠義を尽くす相手は違えど、互いに忠義を一義的とする者同士。せめてもの礼儀として、そなたの首、私がいただこう」

九十九「そうしてくれ。多摩よ、お主とは深く語り合ったことはなかったが、最後に

通じる心があって嬉しく思うぞ」

多摩「信玄公もよろしいでしょうか」

信玄「ああ、よい」

 (多摩は立ち上がり、九十九を連れて出ていく)

 

信玄「ほっほっ、ワシの目も鈍ったものよの。そろそろ引退時かもしれぬ(重い咳払いをする)」

勝頼「親父、少し休まれた方がよいのでは」

倉田「そうです。ご病気が悪化するといけませぬ」

信玄「案ずるより産むが安し。どうもならぬことを論ずとも病には不可抗力よ。病で倒れるならばそれまで。それにワシは家康を討つまでは死なん」

倉田「そう言い切れるとは思えませぬ」

信玄「病は気から、じゃよ。毅然とした心持であれば病は進行せん」

官介「まぁそのことは信玄公自身がわかっておる。今すべきは家康よ。(パソコンの画面を見ながら)衛星の画面からは家康軍はサッカー場中央に集中をしている。周囲に敵方の援軍の気配はしない」

信玄「つまりは全軍を以て中央を突破すると」

官介「おそらくは。何としても家康を逃がそうとする家臣団の苦肉の策でしょう。家康が確認されてない以上、蟻一匹とて逃がすわけにはいきませぬ」

 (多摩が静かに入ってくる)

信玄「おや、浮かぬ顔じゃな。九十九を斬ったことを後悔しておるのか」

多摩「(腰かけたあと、ゆっくりと信玄の方を向いて、静かな口調で)後悔などはありませぬ。ただ、主がために自らの命を捨てる心意気に私はまだまだだと感じました」

信玄「そう感じたお主は次に何を為す。大人物というものは失敗を礎にして何を為すかを見定める、つまりは先見の明を持つ者のことだからの」

多摩「(言葉を強くして)戦地に赴きたく存じます。この命を賭けて家康めの首を持ち帰りましょうぞ」

信玄「ほっほっ、人というものは気持ち次第でこれほど違って見えるものだね。多摩、今のお主の眼は鬼人の如き様よ。存分に暴れてくるがよい」

多摩「有難きお言葉(一礼して、退出)」

 

官介「多摩が出陣すれば皆の士気も上がろう。人の中にはその場にいるだけで周りを鼓舞することができる者がいる、とは不思議よのぉ」

倉田「(ヘコみ気味に)私にはそんな性質はありませぬな(下を向く)」

官介「心配せんでもお主にも―――」

伝令「(焦燥感をあらわにしながら)伝令!も、問題が!(息を切らす)*」

信玄「何事よ」

伝令「ひ、姫様が―――*」

 (松姫が急ぎ足で入ってくる)

松姫「パパ!」

信玄「ま、松よ、ここで何しておる」

松姫「(伝令に向かって)あなたは下がっていいわよ(伝令は下がる)」

 (官介、倉田、勝頼は引き攣った顔をする)

松姫「何してるじゃないよ、今日は私の誕生日だって忘れたの!。パパはいっつもいっつも残業だの、出張だの理由つけて家に帰らないけど、こんな所で遊んでたなんて…(泣き顔になる)」

信玄「すまん、松よ。これも仕事のうちでな…、遊んでたわけではないんじゃが…」

松姫「(泣き顔のまま)言い訳は聞きたくなぁい!」

信玄「(顔色を窺うように)じゃぁ、侘びとして何でも欲しいものを買ってやるから…どうかの?」

松姫「(急に手のひらを返したように眼を輝かせて)ホントに!?じゃぁあ、前欲しいって言ってたプラダのバック、覚えてる(信玄の顔を覗き込む)?、あと~、今ヨーロッパで売りに出ている無人島の命名権とか…、えっとぉ、他には…」

倉田「姫様、その話は後々にお願いしたいのですが―――」

松姫「嫌!倉ちゃん、今はあなたの小言は聞きたくないの」

倉田「(松姫の覇気に押されて)は、はい」

勝頼「(倉田に耳打ちするように)相手が悪うござる」

松姫「(勝頼をキッと睨みつけて)今何か言った?」

勝頼「(たじろいで)いえいえ、滅相もございません(軽くお辞儀をする)」

松姫「ならいいわ」

勝頼「(お辞儀をしたまま、小声で)なぜワシが謝らねばならんのだ」

 (勝頼は松姫の顔色を覗いながらゆっくり顔を上げる)

信玄「じゃが、時に松よ、この前見合いをした(織田)(のぶ)(ただ)君とはどうしたのかね。以前会った時は仲陸奥まじい様子であったろ。誕生日は彼と過ごすと口が酸っぱくなるほど言ってなかったか

松姫「別れちゃったの。だってぇ~、信忠さん優しくないんだもん。『映画行こ~よ』って誘っても、『買い物一緒に行きたいなぁ~』って言っても、『そんなことは女のやることだ』って答えるばっかりで、亭主関白って言うかぁ、時代錯誤って言うのかな」

信玄「そのような逆境を以てしても、松は人と仲良うなろうとする子だったであろ。どうしてこうも早く諦めてしまうんじゃ?」

松姫「諦めるつもりはないんだけど、でもそれはパパのせいでもあるんだよ」

信玄「ワシのせいとは、はて」

松姫「だってぇ~、パパと信忠さんのお父様(信長)って御仲が悪いんでしょ」

信玄「お父様とは、信長のことかの?」

松姫「うん、そう」

信玄「しかし、信長ほどの器の大きな者がその程度のことで、松を煩わせるとは思えぬな(松姫に対して疑いを持ち始め、怪訝そうな目を向ける)」

松姫「(少し焦ったように、信玄から眼をそらして)うんう、違うの。小言を言ってくるのは信長さんの奥さん(濃姫)の方」

(信玄は苦しそうな咳払いをする)

松姫「大丈夫、パパ?」

信玄「話の焦点をずらそうとするでない。(真剣な表情になって)ワシは、おまえを色恋沙汰を理由に戦地へ出向かせるような阿呆(あほう)に育てた覚えはない。浅はかな嘘はワシには通じんよ。事実を言うてみい」

松姫「今まで言ってきたことも嘘じゃないんだよ」

信玄「では、本当に言いたかったことは別にあると言うんじゃな」

松姫「…うん。(舞台の袖の方を向いて)菊、入っておいで~」

 (舞台の袖から菊姫が顔を覗かせて)

菊姫「(松姫の呼びかけに驚いたように)えっ、えっ、でもお姉ちゃんがお父様に言ってくれるって言ってたのに」

官介「菊姫様も来とるのか、やれやれ(頭を抱える)」

松姫「(菊姫の方を向いて、優しく)とりあえず入っておいで(手招きをする)」

 (菊姫は恥ずかしそうにささっと入ってきて、松姫の隣に座る)

信玄「で、菊よ。何が話したいのじゃ」

 (松姫は菊姫に対して頑張ってのジェスチャーっぽいのを始める)

菊姫「お父様、御怒りにならない?」

信玄「(優しい口調で)怒らんよ、何でも言うてみ」

菊姫「ほんと?」

信玄「あぁ、ほんとじゃ」

菊姫「お父様、それほんとにほんと?嘘つかない?」

信玄「(優しい口調で)ほんとじゃ。菊よ、心配せんで、気兼ねなく言うてみ」

菊姫「(信玄の言葉を聞いて顔に笑みをはびこらせて)じゃあ、言うね。えっとね、私ね…、実は…(語気を強めて)結婚するの!(遂に言っちゃった、という風に両手で顔を隠す)」

信玄「(動揺もせず)おおそうか、なるほど、よかったの。で、その相手とは誰じゃ」

菊姫「実は、そこまで来てるの。ここに入れてもいい?」

信玄「ああ、いいよ」

 (菊姫は携帯で電話を掛ける)

菊姫「…あっ、もしもし謙君。お父様が入っていいって―――」

信玄「(小声で)ケン君?はて、誰であろう」

菊姫「―――わかった、じゃあ待ってるね。…うん、うん。…えぇ~、今言うのぉ?……(微笑んで)わかった、(一文字ずつ区切って、はっきり聞こえるように)愛してるよ。…じゃぁバイバイ(電話を切る)」

信玄「そのケン君とやらは、ワシが知ってる相手かね」

松姫「パパは絶対知ってるはず。会ったらわかるよ」

 (菊姫は嬉しそうにほほ笑む)

 

謙信「(舞台の袖から)私です。入ってもよろしいかね?」

松姫「あっ、来たみたい。早く入って、入って~」

 (謙信はムスッとした顔つきで入ってくる)

 

(信玄・謙信は眼を合わせると驚いたように眼を見開いて、顔を引きつらせて、同時に)

 

信玄「謙信!!(勢いよく立ちあがる)」

謙信「信玄!!」

 

 

謙信「(菊姫に向かって、動揺して)き、き、菊よ。まさかお前の言うお父様とは(信玄を指さし)この男のことではなかろうな」

菊姫「(信玄・謙信両方の顔を見回しながら)えっ、待って。何で、何で?謙君ってお父様と御友達じゃないの」

 (ここからの信玄と謙信の会話は子供じみた喧嘩のように)

 (菊姫は信玄・謙信のいがみ合いを見ながらなだんだんと泣き顔になっていく。そ

れを松姫は慰めようとする)

 

信玄「菊、了見違いも甚だしいぞ。なんぜワシがこんな卑怯者と御友達なはずがあろうことか」

謙信「なんと。卑怯者とはお前のことであろう。はっ、もしや、菊ちゃんを利用して吾を呼び出し、この上杉謙信が首を討ち取ろうという魂胆か!この卑怯者め!」

信玄「仮に菊の結婚相手が貴様と知っていようと、そのような下賤な手段は取らんわ!むしろ、下賤な策を思いつく貴様こそ心が廃れておるわ!」

謙信「吾はただ菊ちゃんと結婚したい一心を以て訪れたことに嘘偽りなどあるはずもあろうか。その心は一点の淀みさえ無き水晶が如きよ」

信玄「第一、先ほどから聞いておれば菊のことを『菊ちゃん』『菊ちゃん』と馴れ馴れしく呼びおって!許さんぞ!」

謙信「結婚相手を何と呼ぼうと吾の勝手であろう」

信玄「なんだと!まだ結婚など認めておらぬわ(謙信の胸倉を勢いよく掴む)」

謙信「吾とやるつもりかね、宿敵(信玄の胸倉をつかみ返す)」

 

 (次の官介・勝頼・倉田の会話中は信玄と謙信は胸倉をつかみ合ったまま睨み合い続ける)

官介「やれやれ、信玄公と謙信公がそろうといつもこれよ(溜め息をつく)」

勝頼「まことに犬猿の仲とは、傍迷惑(はためいわく)なことですな」

官介「私はこの茶番が終わるまで外で一服でもしてくることとしよう(腰を上げる)。勝頼殿もいかがかな?」

勝頼「そうあらば、私も行くこととしよう」

倉田「では私も(腰を上げようとする)」

官介「お主はだめじゃ。誰かおらねば信玄公にもしものことがあった際対応できぬであろ。倉よ、お主はまだ若い。このような経験も必要であるぞ(意地悪な微笑する)」

倉田「(納得がいかないながら、しぶしぶ)わかりました(腰をかけ、軽く一礼)」

勝頼「(立ち上がりながら)では、しばし」

 (官介・勝頼は退出する)

 

 

信玄「(謙信を突き放して)そなたとやりおうても益はないわ」

謙信「(着崩れを直しながら、嫌味っぽく)負けるのが怖いのであろ。昔からよく喧嘩しおうたが、今考えると負けた記憶がないわ。なるほど、だから分国法に喧嘩両成敗などつまらぬ規則を設けたのか」

信玄「ワシが負けたと?ほっ、都合のよい記憶じゃの。いつもいつも姑息な手ばかり使いおって。よくもそれで勝ったと威張れるものよの」

謙信「勝ちは勝ちよ。そのころから軍略の神としての才能が芽生え始めていた証拠であろう」

信玄「仮にその才が芽生えてたとしても、川中島でワシの愚策に次々と陥っていったことを考えると、どうやらその芽は実ることなく枯れてしまったようじゃの、ほっほっほっ」

謙信「お主こそ記憶が悪いぞ。吾が貴様の軍師山本の生み出した『啄木鳥(きつつき)戦法』とやらを見抜き、逆に利用してやったことを忘れたか」

信玄「ふん。たかだか一回の成功を自らの才によるものと見誤るとは、まだ未熟だというのを吐露しているようなものよ」

 (ここからさらに子供じみてきて)

謙信「(言い返す言葉がなくなり、少しつまって)…こ、この泣き虫信玄!」

信玄「なんじゃと!」

謙信「だ、だって、そうだったではないか。転んだらすぐ泣きわめいていたであろう」

信玄「そういうお前だって、周りから偏屈者といわれ、誰も友達がおらんかったではないかね」

謙信「過去のことを引き合いに出すのは卑怯よ!」

信玄「言いだしたのはそちらのほうであろう。本当に都合のよい記憶力だことよ」

謙信「(とぼけて)はて、そんなこといつ言ったか?」

信玄「話にならんわ!この阿呆め」

謙信「阿呆と言う方が阿呆なのよ」

信玄「いちいち『阿呆』という言葉に反応してくる方こそ―――」

菊姫「もう嫌!お父様も謙君も大っ嫌い!(勢いよく立ちあがり、泣きながら足早に退出)」

松姫「菊~(菊姫を追って退出)」

 

謙信「菊!お待ちあれ(謙信も菊姫の後を追いかけようとし、信玄に背を向ける)」

信玄「待てい、謙信!(謙信は信玄の方を振り返る)菊とお前の結婚(首を大きく横に振りながら)絶対、絶~対に(謙信を睨みつけ)結婚は許さんからな!!」

謙信「お父様が何と言おうと―――」

信玄「厭味にも、ワシのことを『お父様』などと言うな!寒気がするわ!」

謙信「ふん、まぁよい。信玄よ、貴様が何と言おうとも、菊は吾が(めと)る。(退出しようと背を向けるが、何かを思い出したかのように)そうよ(信玄の方を振り向き)、忘れておったわ

 (謙信は胸元から小さな袋を取り出し信玄に突き出す)

信玄「何かね、これは。ワシの歓心を買おうとしても無駄じゃよ」

謙信「まあ、そう言わず受け取っておけい(袋を信玄の足元に置き)、越後の塩よ。結納金の代わりとして取っておけ(足早に退出)」

信玄「(立ち去る謙信の背に向かって)何と言おうと結婚は許さんからの!」

 (信玄はゆっくりと腰を下ろす)

 

倉田「(小さい声で)親父、情けのうござる(頭を抱える)」

信玄「(倉田の方を向いて、謙信への怒りの余韻を残したまま)今何か言ったかの」

倉田「(少し焦って)い、いえ、いえ、何も申しておりませぬ」

信玄「(怒り気味に、袋の結びを解きながら)にしても、たかだか塩で結婚の許しを得ようとは馬鹿げているわ(塩を軽く舐める)……………(冷静さを取り戻し、低い声で)うまい」

 

 (官介・勝頼が静かに入ってきて、腰かける)

勝頼「(一呼吸おいて)まったく親父は謙信公に対面する度に、主君としての立ち居振る舞いを忘れ、気が狂ったように子供じみなさる。今は戦のさなかにあり、家臣は大方出払っているためよかったものの―――」

官介「しかし、あまりにも厳格すぎる主君にも誰も仕えようとは思わんだろ。客観的に見れば、あのような振る舞いは可愛げがあって、むしろ家臣は好感を持つものよ」

信玄「(笑みを含めた口調で)おや、それでは先ほどそちから聞こえた『やれやれ、またか』とため息をついていたのは何なのかね?」

官介「これはこれは信玄公、地獄耳の持ち主だこと。謙信公と喧嘩をしとっても冷静に私の話を聞いておられる。はっはっはっ、これには感服」

倉田「はっはっ、恐ろしや。しかし、流石は親父であることよ」

 

伝令「伝令!今しがた宇喜多隊が家康を討ち取ったとのこと」

 (一同歓喜を上げるが、信玄だけは納得のいかない表情を浮かべる)

倉田「おお!やりおったか宇喜多殿」

官介「まことに、愉快なことじゃ」

勝頼「(信玄の顔色を見て)親父!もっと喜んではいかがか」

信玄「(静かで、重い口調で)少しおかしいとはおもわんかね」

倉田「何がです?」

信玄「九十九は自分の使命を家康を逃がすがために『時間を稼ぐこと』であった。それにも関らず、こうも簡単に家康を討ち取ったとは考えにくい」

勝頼「とすれば宇喜多が―――」

官介「それはあるまい。宇喜多の心は完全にこちらへ通じておった。今更謀反をするような度胸を持った武士でもあるまい。懸念されるべきは影武者の存在であるかと」

信玄「いかにも。…まぁ、事実を確認せんことには、何も始まらん。机上の空論を続けても意味はないからね」

官介「ならば、討ち取ったとされる家康の首の写真を、徳川家データベースの人物照合ソフトにかけてみればわかりまする」

勝頼「すぐに始めてくれ」

 

 (官介がパソコンを打つ音だけが響く)

官介「…わかりましたぞ。家康の首と目されたのは徳川家家臣夏目(なつめ)(よし)(のぶ)であると確認」

倉田「くっ。やはり影武者か」

伝令「伝令!サッカー場から権現橋にかけて、家康と名乗る武将を多数確認*」

官介「これはまさに影武者の山じゃな」

信玄「衛星で顔は特定できぬか?」

伝令「敵将全て覆面を着けている故、判別は難しいかと」

倉田「魚鱗の陣により家康軍を包囲しているとはいえ、雑踏に紛れて抜け出す可能性は大いにある。家康を討つためには蟻一匹として、逃がしてはならぬということ―――」

信玄「(重々しい咳払いをする)…」

勝頼「親父、やはり少し休まれた方がよろしいのでは」

信玄「(苦しそうに)それには及ばぬよ。先ほども言ったように、家康を討つまでは死んでも死にきれんわ(重々しい咳払いをする)」

伝令「伝令!山崎隊、家康と思しき敵将を討ち取ったとのこと」

官介「今すぐ、その虚実の確認を(パソコンを打ち始める)」

信玄「(重々しい咳払いをし、苦しい表情をする)…」

倉田「目に余りまする。親父、ここはどうかお休みください」

信玄「倉田よ、お主の提案ももっともだが、ワシが下がったと知れれば皆の士気に影響する。下がるにも下がれんわけよ」

官介「…先ほど山崎隊が討ち取った首は家康ではなく、徳川家家臣鈴木(すずき)(きゅう)三郎(ざぶろう)であると確認」

信玄「これでは埒が明かんの。(少し考えて)勝頼、多摩に連絡を取り、次のように命ぜよ。『荷駄隊に姿を扮せよ』と」

勝頼「はっ、直ちに(携帯を持って退出)」

倉田「しかし、何故荷駄隊のふりをさせるのです?」

官介「今までの状況を見たところ、家康の家臣団は自らの命を捨てようとも主君家康を守るつもりでおると思われる。つまりは、この戦場から逃げようとするのは家康ただ一人―――」

倉田「ということは、家康が撤退する経路として狙うのは、手薄な荷駄隊であり、そこを突破しようとする家康の首を多摩が狙うと」

信玄「(苦しそうに)ほっほっ、いかにも。少しは成長したようじゃの、倉…(胸のあたりを押さえながら苦しみだす)」

 (信玄の急変を見て、官介・倉田は同時に)

 

官介「信玄公!」

倉田「親父!」

 

 

 (官介・倉田は信玄の側に駆け寄る)

倉田「医者を呼べ!医者を、早く!」

 (勝頼が急ぎ足で戻ってくる)

勝頼「親父!(信玄の側に駆け寄る)どうした!家康を討つまでは死なぬと言ったばかりではないか!―――」

 (ゆっくりと暗転へ)

 

  

 

 

(出演順)

1 武田信玄 実在 甲斐の虎

2  伝令  実在 戦地の状況を伝える 個人名ではない

3  大柴  架空 信玄の家臣

4  九十九  架空 信玄の家臣

5  倉田  架空 信玄の家臣

6  多摩  架空 信玄の家臣

7  佐助  実在 信玄配下の甲賀忍者

8  官介  架空 信玄の家臣

9 武田勝頼 実在 信玄の息子

10 松姫  実在 信玄の娘

11 菊姫  実在 信玄の娘

12上杉謙信 実在 信玄の宿敵 越後の龍

ここでは菊姫と結婚することになっているが実際は景勝(謙信の養子)と菊姫が結婚する

 

『ひとりごちたまふことなかれ』

2006.12.28(18歳)

                      注)添付の写真・画像はそうるMが付けました

目次

目次

 

  壱『柔軟な一貫性』

  弐『悲観の逆説』

  参『心の戦争』

  四『子供の幸せ』

  五『無方向性の発信』

  六『相対的概念の耐震強度』

 

 

 

『柔軟な一貫性』

 

人は一貫性を保つことは本当に難しい。そして、人が作り上げる社会、文化あるいは宗教その他諸々、1つとして一貫性は感じられない。西洋の絶対的神の存在であれ「絶対的」といいながらも歴史の変遷により変化したことは明らかだ。

 人は1つの感情から成り立っているわけではない。喜怒哀楽、それだけでは言い表すことのできない機微の感情が常に見え隠れし、それなりに有機的存在としてあるわけだが、これを一貫性に結びつけるのは難しいだろう。また、人は、皆潜在的に多重人格であるという説もある。

 だが、世間にはいわゆる「絶対妥協しない人」「何にも頼らず生きていける人」「女性には興味を示さない人」などと一貫性を保った人という意味での言葉が通じるのであるが、人が他との関連性を持ってでしか生きていけない、さらに言うと他との関連性があることが人が人である絶対条件である以上、一貫性というものは存在し得ないと思われる。人が他との関連性を持つ以上、それらと折り合いをつけていかないと生きていくことは困難である。自分が貫いていると思っている一貫性を諦めねばならない場合が生じてくる。その時点で一貫性は一貫性と呼べるものではなくなる。

 先ほど挙げた例をとって考えてみよう。「女性には興味を示さない人」とあるがここでいう「興味」の範囲というのはある特定の人の主観、または不特定のアベレージでしかなく、その言葉の許容範囲は一定、普遍ではない(それが言葉の性質でもあるのだが)。自分ではそう思っていても客観的に普遍で無い以上ただの独りよがりにすぎない。

 「絶対妥協しない人」とあるが、例えばミケランジェロの『ダビデ像』、ミレーの『落穂拾い』、ピカソの『ゲルニカ』に至るまですべて妥協という過程により完成したものである。もし芸術家が妥協を知らなければ、その芸術家の作品はまず世にでることはありえない。

 「何にも頼らず生きていける人」などまさに論外である。生きていくうえで不可欠な食べるという行為を例に挙げるだけでも、すでに自然との関連性を持っている。たとえ「何」を「誰」に変えようと、人が母親から生まれた事実を考えれば、同じ結論に至る。「何」に当てはまるものをより具体化していけば、もしかしたら、一貫性が保たれてることになるかもしれないが、具体化し幅を狭めていけば、それはただ普通に生活しているだけになり、これを一貫性と呼ぶのはどうかと思われる(例えば「僕はアメリカに住んでいるボブには頼らず生活していける」というのは一貫性と呼ぶのに足るものであるかということである)。

 一貫性という概念には完璧さというものが付随する。そして、私たちが実行する一貫性というものには、人が他人との関連性を保つため折り合いをつけなければならないので、必ず欠点が存在し、見る側面によっては一瞬のうちに崩壊する。

 人は心のどこかで一貫性を理想のように考えているが(もちろん他人の意見に追従してばかりの人に比べたらそうであろうが)、実は一貫性が無いところに本当の人間の姿があるのであると考える。人間は一貫性の無い存在なのである。

だが、私は人には一貫性は存在すると思う。ただ、ここでいう一貫性とは先ほどまでの「完璧な一貫性」ではない。それは「柔軟な一貫性」であり、その一貫性は可塑の性質を持たない。

人が他人を観察するとき(たとえ自分で自分を観察するとしても)、常にその人を見ているわけではない、言い換えれば、線ではなく点で捉える。まるでその人が一貫性を保っているように見える、つまり先ほどの例の「絶対妥協しない人」「何にも頼らず生きていける人」「女性には興味を示さない人」のような呼ばれ方をする人がいるというのは、人が他人を観察するときの性質と、人が「柔軟な一貫性」を持っているという2つの要因がある。折り合いをつけた瞬間、言い換えれば、一貫性を崩壊させる可能性を持つものが現れたとしても大抵の場合見逃してしまい、さらにその柔軟性により、いつの間にか元の軌道に修正されている、だから「完璧な一貫性」を持っているように見える。

 普通の会社員は、いつも同じ時間に起床し、同じ時刻発の電車に揺られ、いつもとほぼ変わらないの仕事をする。そして、週末の休みにはいつもより遅い時間に起床し、ダラダラと一日を過ごしたりする。だが、また次の日からは、いつも同じ時間に起床し、同じ時刻発の電車に揺られ、いつもとほぼ変わらないの仕事をする。私が言っているのは、まさにこのような一貫性なのである。

 私個人としての「好きなものの定義」は「柔軟な一貫性」だとしている。私にとって好きなものとは一時的な感情に流されたものではない。たとえ好きといっていたものでも飽きは来る。だが、本当に好きなものはまた時間を経てから触れたくなる。そして、また飽きが来て、そしてまた触れたくなる。その循環の中で、重層的に積み上げられ、それが現在も続いている、そんな時に初めて「これが好きだ」と言えると思う。だから、流行の中で軽々しく使われているのを聞くとどこか解せない感じがする。

 長々しき独り言・・・・・・

 

 

 

 

『悲観の逆説』

 

 これから書くことは特に根拠も無くただの経験論に過ぎないかもしれないが、ひとつの考え方の参考にしてもらえたら光栄です。

悲観主義者と楽観主義者、辞書的な意味では前者は物事を悪く考えがちな性格、後者は物事の結果がよくなると思い心配しない性格とある。前者は「ネガティブに考えるな!」と非難を受ける対象であり、後者は「ポジティブに考えろ!」と精神の状態として理想視されるものである。

 個人主義、個人の尊重などというわりには、1つのこれが正しいという固定観念が平然と出回っているように思える。悲観的と楽観的の間にもその固定観念が存在する。楽観的に考えること、それがすべての人にとっての理想とされているところがある。

 もちろん、楽観的であることが駄目だとは言わない。生まれながらに、楽観主義者であることは望ましいことである。

 だが、馬鹿の一つ覚えみたいに「悲観的になるな!ポジティブに考えろよ!」などと言ったところで、何の意味も無いとは言わないが、効果は薄いと思われる。言語学の観点から言うと、幾度も使われる言葉は本来のその言葉の意味が浅くなっていくというところがあるので(「最悪」とは「最も」「悪い」と書くが、決して最も悪い状況で使うわけではない)、「悲観的になるな!」という言葉の重みが薄れていき、その言葉を受ける側の人の心の核に触れることはできない。

 私自身、楽観的に考えることは大事だと思う。ただ問題なのはどのようにして楽観的思考を導き出すかというところである。

 先ほどの「生まれながらに」や「他人に指摘されて」も、ひとつの手段ではあるのだけれど、ここでは私自身が立脚している「逆説的悲観主義」という楽観主義を紹介したい。

 私自身、生まれながらにして楽観主義者ではない。明日は苦手な体育でマラソンがあるからといって憂鬱になったり、友達に貸したゲームを返してもらいたいがそれで交友関係がギクシャクするのではと躊躇したり、・・・・・・。例を挙げれば数限りなく出てくる。

 考えれば考えるほど深みにはまっていく、空想の中でどんどんエスカレートしていき、最悪の状況を想定する。これは楽観主義者にとって非難すべき格好のネタであるが、最悪の状況を想定するところに、楽観的思考が生まれてくると考える。これが「逆説的悲観主義」という楽観主義なのである。最初にも述べたように、これには明確な根拠は無く、経験的に自分なりに導き出したものであり、断定はしない。

 では、なぜ最悪の状況から楽観的思考が導き出されるのか。それは空想の世界と現実の世界の間の大きな隔たりにある。地方から東京へ移住する人がテレビで見る東京都心の様子を思い浮かべ、東京の全体像を想像するのだが、実際越してきて、東京の静かな場所などに触れると想像し抱いていた全体像が一瞬にして崩壊する。これはひとつの例に過ぎないが、初めての人に会うとき、海外へ旅行するときなどにおいても同様のことが言える。局所的に見ればアナロジーも存在するであろうが、俯瞰的に見れば空想の世界と現実の世界は大きく異なっている。空想の世界での要素がすべて、現実の世界に体現されることはまずありえないのである。とすれば、空想の世界内に存在するすべての要素において、最悪の事態を想定した場合、現実に起こるすべての出来事はプラスイメージに転じるであろう。このプラスイメージこそ楽観的思考に繋がるものである。

 中途半端であってはならない。常に最悪の状況を想定する。そうすることによって、現実は想像していたよりも遥かに居心地のいい場所になる。これを繰り返すことで、その場その場での最悪の状況を想定しつつも、これよりも悪くはならないという楽観的思考が生じてくるのである。一般に「良い」「悪い」とは相対的な概念で、どちらかが無ければ両方成立しない。だが、私の言う楽観主義においては「悪い」という概念を現実世界において完全に排除する。「良い」という概念を絶対化するのである。心の安定化を図るのは実際現実世界に起こる様々な出来事であり、それらすべてに「良い」イメージを付随させられれば、空想の世界における最悪の状況など取るに足らないものになる。

「事実は小説よりも奇なり」とはいうが、「逆説的悲観主義」とはまさに「小説は事実よりも奇なり」と結びつくものであり、「事実は小説よりも奇なり」とは想定の中途半端さが招くものなのである。

 さきほど、「逆説的悲観主義」において、すべての「悪い」イメージを排除すると言ったが、1つだけそれを取り除くことのできない概念がある。死の概念である。これについては言うまでも無く「悪い」、マイナスイメージが付随する。しかし、これについては考える必要はない。いかなる楽観主義者であれ、これに「良い」イメージを付加することはできないからである。死については時間をかけてゆっくり心の傷を癒すより他ない。

 ただ、幼いころから「逆説的悲観主義」を教え込むより、「ネガティブに考えるな!」といって教えたほうがいいだろう。この楽観主義は経験を基盤として成り立つので、海千山千の宝庫である日本の高齢社会には良いのかもしれない。

『心の戦争』

 

 最近、学校でのいじめ問題がメディアを通して報道されている。いじめ問題は学校職員の怠慢、家庭教育、電子メディアの発達による人間関係の軽薄さなどの諸要因が複雑に絡まって生じた問題であろうが、ここでその責任は誰にあるのかは言及するつもりはない。いじめにおける精神のあり方を少し話したいと思う。

 「戦争」という言葉を聴いて何を思い浮かべるだろうか。おそらく第一次世界大戦、第二次世界大戦、あるいは関ヶ原の戦い、フランス革命、アメリカ独立戦争、広い意味で取れば小学生のケンカなども、数限りなく挙げることができると思う。ここで挙げたものはいずれもphysicalなもの、つまり肉体や武器もしくは知略(これはphysicalに入らないかもしれないが)などのぶつかり合いであり、人が「戦争」と聞かれたとき、結びつくものである。

 しかし、「戦争」という言葉は、physicalなものとだけ結びつくわけではないだろう。「戦争」という言葉は、文字通り〈戦う〉ことと〈争う〉ことである。当然、spiritualな、つまり心と心の「戦争」も存在するということは想像に難くない。そして、この「心の戦争」の一部を占めるものが「いじめ」であり、「心の戦争」は「肉体の戦争」の基盤となり、拍車をかけている。何の理由もなくいきなり殴りかかる人はいないだろう。そこには正当であろうとなかろうと理由があるはずだから。そして、多くの場合、「いじめ」の形状を「肉体の戦争」で置き換えてみると軍事力・権力を持った者同士の争いではなく、軍事力・権力を持った者が軍事力・権力を持たない者へ一方的に仕掛け、仕掛けられた側は反撃することを許されないというものである。「いじめ」は世界でさまざまな形で現れ、例えば民族・宗教・人種に対する迫害や、今現在いじめが表す意味としての学校におけるいじめなどがそれにあたる。

 「肉体の戦争」と「心の戦争」は出現の時期を同じくし(若干後者のほうが基盤となる点では早いだろうが)、原始共生社会の終焉、つまり、貧富の差、身分差の生じたころと考えるのは妥当だろう。そして、表面的に現れる「肉体の戦争」でさえ、平和と呼ばれる現代において払拭できていないのだから、「心の戦争」、その中でも特に陰湿さを持つ「いじめ」は無くなっていない。「肉体の戦争」は先ほども言ったように表面的に現れるものであるから、無理やりに押し込めることは可能だが、陰湿さを持った「いじめ」にはどのように向かい合う必要があるのだろうか。

 私自身は「争う」ということには肯定的である。「争う」ことがなければ、ヒトラーのようなファシズム、全体主義となりかねないからである。しかし、「争う」の延長線上に位置する「戦争」、つまり人の生死を左右する意味での「争う」に関しては熟考する必要があり、「いじめ」も例外ではない。

 そうは言いながらも、私個人としては「いじめ」をある意味で肯定する立場を取っている。私にとっての「いじめ」の始まりとは、それをする側の人間あるいは集団がそれをされる側への宣戦布告であり、相手が掲示した次の契約書にサインすることである。

 

「私はいじめられることを受け入れます。ただ、ひとつのものを与えてくれるなら。この戦争における生死の決定権を。私が私自身を殺す権利を、私があなたがたを殺す権利を」

 

先ほどからも言っているように、「いじめ」とは「心の戦争」であり、しかも、生死に関与する「戦争」に包括されるものであるから、まさにそこは本物の戦争と変わらない戦場とも言える。いじめによる「自殺」とはこの契約書における「自分自身を殺す権利」を行使した結果であって、「あなたがたを殺す権利」を行使する可能性は必ず存在する。もしあなたがある人からナイフを突き立てられたとき、その人とあなた自身の関係の中に「いじめた(いじめている)」という言葉が生じるならば、受け入れなければいけない。その場で人権など何だの叫ぶのはお門違いである。その覚悟ができているなら、私はあなたのいじめるという行為を認めよう。

 長々しき独り言・・・・・・

『子供の幸せ』

 

 「子供にとっての幸せって何だと思う?」

この質問にあなたなら何と答えますか。もちろんこの質問に明確な答えはありません。各々が出した答えそれぞれが正解であり間違いでもあります。

 私はいつのころからか、結婚したいと思った人にこの質問を投げかけたいと思っていました。今現在では、自分は一人を好み、協調性に乏しく、気分屋というのがわかって来て結婚には向かないなとうすうす感じてきたので、このように話しているわけです。

 私自身この質問に対する理想的な答えは

「親の仲がいいこと」

でした。ここでの「でした」という過去形は今は違うという意味じゃなく、自分は結婚できないと思うことから来る「でした」です。

 この質問の答えは各々の経験の違いで違ってくるでしょうが、自分の子供のころを思い出すと親が喧嘩しているときは、どうも落ち着かない自分がいるのに気づきました。それを埋め合わせてくれるのは、お金や娯楽などそんなものではなく、親が仲直りした姿を見ることでした。

 親がお金の関係のことで離れ離れになるのを見るのは子供にとっての最大の不幸だと思います。

 今日は短き独り言・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無方向性の発信』

 

 今や情報化社会となり、電波が行き来しない日は無いだろう。情報や商品といったあらゆるものが発信されている。もちろん“発信”されるわけであるから、発信の対象となる「相手」が必要である。私自身このことに疑いを持つことは無く、自明なものだと思っていた。しかし、度々文章を書くようになった最近、実は必ずしも「相手」は必要ではないと思い始めた。すべてのものがそうだとは言い切れないが、文章を書くということには、「相手」を必要としない、いやむしろその「相手」が「自分」ではないか。発信の対象を「自分ではない相手」とするものは、書かれた文章を伝える媒体――メディア――である。つまり、発信の根源が対象とするものが「自分」、それを広く伝える媒体が対象とするのが「相手」ということである。

 よくテレビで歌手が「歌でこの思いを多くの人に伝えたい」などと言っている。だが、私にはその言葉が「この思いを常に持ち続けていたい」と聞こえる。つまり、この場合、私の見解からすると歌が発信の対象としているのは「自分(歌手自身)」であり、「相手(聴衆)」を対象として発信しているのはテレビである。

 私がここで取り上げたいのは発信の根源が対象とするのは「自分」である点だが、その前に発信の根源が「自分」を対象とするものなのに、なぜそれを広く伝えようとする媒体が現れるのか、という矛盾に答えておきたい。それは、簡単に言うと、そこに利害関係が生じるからである。それが、発信の根源と媒体を繋ぐもので、人間の利益追求の欲求がなくならない限り、切れることはない。

 少し話しはずれてしまったが、ではなぜ発信の根源が「自分」を対象としているのか。それは、人の感情の曖昧さ、不明確さにある。人は誰でも「私はこう思っている。絶対にこの気持ちは変わらない」と思っていても、時と状況によってはその絶対性に不安を覚えてしまうことがある。この不安を取り除く手助けをしてくれるのが、例えば文章を書くという行為なのである。感情は多義的なものであるが、その感情を文字に変換することで一義的感情に変質させる。つまり、感情を固定し、絶対性を付加させるわけである。こうして出来上がった一義的感情が「自分」に訴えかけ、「自分」に安心感を与える。この点で発信の根源は「相手」を必要としない、つまり「自分」に向けられたものだといっているわけです。

 長々しき独り言・・・・・・

 

 

 

 

 

 

『相対的概念の耐震強度』

 

 「上」「下」という相対的概念、「左」「右」という相対的概念、ともに知らない人はいないであろう。これら概念は「上下左右」などと使われるように、私たちのイメージの中では同列の印象が強いように思われる。つまり、「上」「下」が「左」「右」よりも優れている、もしくは劣っているという感情は生まれてこないということである。

 しかし、「上」「下」と「左」「右」の間には大きな差異が見受けられる。ただし、これが優劣を決める要素とはなりがたく、今から主張することは軟らかいメスを表面に置いたぐらいのものかもしれない。

 例えば、自明のことであり幼稚園の授業の様であるが、次のことを想像してみてほしい。人には右手、左手があるが、向かい合った相手の右手は自分から見てどちらにあるかと言えば、もちろん左にある。また、自分の左にはリンゴが、右にはミカンが置いてあるとして、自分の向きを一八〇度変えると、リンゴは右に、ミカンは左になる。しかし、上にある空、下にある地面はどうであろうか。たとえ、逆立ちしたとしても、下にある空、上にある地面とはならないであろう(それは下にある空と主張されると言い返す術がないのだが、おそらく一般的に私の思うイメージのほうが強いであろう)。

 歴史的事実を元にしても、例を挙げてみると、日本では左大臣・右大臣という位があり、左大臣は右大臣よりも偉い、その一方インドでは左手は穢れた手とされ、右手は左手よりも神聖であるという思想があるそうである。しかし、歴史的ヒエラルキー(身分制度)に関して、三角形の構図がよく取り上げられるが、一般的に共通して言えることは、上に行くほど偉く、下に行くほど身分が低くなる。

 以上からもわかるように、「左」「右」は揺らぎやすい概念、「上」「下」は揺らぎにくい概念である。あくまでも、揺らぎやすい(・・・)、揺らぎにくい(・・・)であって、確実に揺らぐ、確実に揺らがないというわけではない。揺らぎにくい「上」「下」という概念であっても高低差のある工事現場などでは、非常に揺らぎやすい概念へと一変する。

 このような相対的概念の揺らぎやすさを私は『相対的概念の耐震強度』と定義している。しかし、言葉の使われ方は多様であるため、その耐震強度は明確な数字で表すことはできず、相対的概念の耐震強度の比較はできるものの、それの依拠するところは、各々個人の感覚に頼るほか無い。先ほど挙げた「上」「下」と「左」「右」ほど耐震強度の隔たりがあれば、比較は容易なのだが、「前」「後」と「左」「右」となると話は別であろう。

 ただ、これらの比較の大小がそれらの相対的概念の優劣を決めるものではない。例えば、道を尋ねられたとき、「ここをまっすぐ行って、突き当りで右に曲がって、二つ目の信号で左に曲がったところです」という説明の「左」「右」を「上」「下」で代用することができないように、使用される場面が違うためである。

 また、実際に耐震強度が最も高いビルであっても、どんな地震が来ても大丈夫というわけではないということと同じように、相対的概念の耐震強度がいくら高くても、揺るがないものはない。もし揺るがないものがあるとすれば、それは相対的概念ではなく絶対的概念というまったくの別物である。むしろ、安定性の無い、つまり相対的概念の耐震強度の低い概念こそが、相対的概念らしいと言えるであろう。

 長々しき独り言・・・・・・

 

 

 

 

 

🌸思い出の静岡駿府の桜 3.19 

ようこそのページに載せました

https://tensun914.jimdo.com/

プロフィール代わり

量昇天後 名前量の文字だけが残りました 2012.5.1 

(展示会の秋11月の写真から)

翔はかせが写真ツイートでアドバイス、先祖墓探索のおかげで、昇天後3年目に行き場のなかった量くんは

観心寺さんの供養塔に入れて

いただきました。

 

その感謝の気持ちで作りだした翔月語り。翔はかせさんのお顔も本名も存じ上げませんが、7年来フォロワーさんでいてくださりました。

その名写真家の翔さんと、それからこの秋出会ったフォロワーさんたちのツイートに最後まで生きる力戴いたお礼の形として、この平成最後の思い出と祈りのtweet集制作することになりましたこと、ここにお知らせいたします。 2018.11.1 

よぼよぼ工房の展示会の搬出の写真です。どうにかお父さん(右から二番目)と手伝い人(左から二番目)

今年の展示会こぎつけて終了できました。でも二人とも腰痛と椎間板イカレで、まだ手伝い人だけ展示場台のセッティング体が動きました。火事場のバカ力保持者は自分だけですよ(苦笑)お手伝い会員さんのメンバーも写真ではまだ元気に見えますが、みんな体ガタガタヨボヨボです。来年は出来るかなぁと思いながら最終活。量くんも天の高い所から苦笑しながら観ていてくれたかな。

このページを見られてる皆さんはまだ若いはず。どうぞ日々時間という宝石を大切にしながら頑張って下さい。12.23記

 

ウイルス跋扈で

即売会もお流れになり 9月へ持ち越し。作陶生活も体の老化で難しいお父さん 今こそ好きな絵を描いて下さい。と励ましてどうにか最後まで

食いつなげたら本望でしょう。

とにかくネット嫌いのアナログ職人さんですので、春福音~日本列島ファイトの動画も観てくださったことなしで毛嫌いされてるもので、こっちはこっち、あっちはあっちで頑張ってます。それでも裸の正直でいい楽書描いてくれてます。

いつかその動画こっそり作ろうかなぁと思ってる相方ですが、そんなことを知ったら、全部焼却処分するような短気なお父さんなので ま、いいか。とにかく、日々楽しく笑顔でいてくれたらどっちが先に行くにしても 天上の量くんの足をひっぱることもないでしょう。

そんな日々。みなさんも

楽しむことが結局強い 青島さんだったか、談志さんだったか言っておられたように、どんな境涯にあっても笑って楽しむ奴が勝つ。もちろん自分にですが。ではお元気で。

     5月24日記

 

追伸

静大の植物をtwittしてくださってる方がおられます。

とても楽しみです。どうぞ

続けて下さい。量が歩いた学内構内を歩けてる気持ちになって 嬉しいです。有難うございます🌸

https://www.muryogama.com/

天寸小山量 天上14歳 令和3.3.24楽

小山量 天上 正定聚仲間入り

6.4.8 学びへ 

   天地融合平和祈念317---

   ⚾天使他力さん守り

   正定聚2年目の

  普賢 量くんお手伝いよろしく

  文殊の岡くん

    地上で元気よろしく